相続に関する不動産のご相談で最も多いのが、相続した土地・建物を実際には使わないので売却したいというものです。

不動産の売却は人生で何度も経験することではないため、不動産会社に比べると相続人の経験値が圧倒的に少なく、実際よりも不利なのが現実です。

「より良い売却の方法」「より良いタイミング」「より良い特例の使い方」など、専門家に相談して最低限の情報を把握した上で、実際の売却に進みましょう。

だれが相続するか決まっていない不動産を売却する場合

相続財産を未分割のまま売却する場合には、各相続人が法定相続分に基づいて共同で相続し、売却したものと考えられます。

この割合に基づいて売却代金等を按分し、それぞれが税金を計算して申告することになります。
実際にその不動産に居住している人は相続税申告時に居住用の特例が使えます。

なお、売却してしまうと法定相続分でそれぞれが相続することを同意したと判断されます。
後になって分割協議を行って法定相続分と異なる割合で代金を分割することになっても、原則的には認められませんのでご注意ください。

相続してすぐ売却するときの注意点

小規模宅地の特例は、土地の評価額を最大で80%減額するもので、実際にこの特例を使ったおかげで相続税がゼロになったというケースは少なくありません。

配偶者がその土地を相続する場合は、いつ売却しても80%の減額ができることになっています。
しかし、その他の相続人によって相続税の申告期限(亡くなった日から10ヶ月後)までにその土地を売却してしまうと、80%の減額とならずに、50%の減額になってしまうことがあります。

たとえ減額できると言っても、30%の差は大きいので注意して進めなければなりません。

小規模宅地の特例が適用されるには、その他にも様々な要件を満たす必要がありますので、必ず専門家に確認してください。

優遇税制・取得費加算特例

「相続税納税のための土地売却については譲渡税を安くする」という趣旨の特例があります。
土地に対する相続税を1億円納税していれば、一定の期日までに土地を売却することで、土地譲渡益1億円までは非課税になります。

ちなみに、相続税は現金で無事納税が完了していても、相続税申告から3年間はこの特例が適用でき、非課税枠が適用できます。

例えば、平成18年4月1日に相続開始(亡くなった)の場合には、平成21年4月1日が期限日になります。逆に、平成21年5月に御当主が亡くなった家では、平成24年5月までが最大の売却チャンスになります。

また、相続税を物納した場合でも使えます(全額ではありません)。